COLUMN
第三回 オンライン会議や研修、個別面談のときに気をつけたい7つのこと
コラム連載【看護師の病院と家庭のコミュニケーションの『なぜ?』をコーチング技法で解決!】
TNサクセスコーチング株式会社 奥山美奈さんの看護師に向けたコラム連載です。病院、日常生活でのコミュニケーションの疑問や悩みを事例と一緒に打開していきます。医療現場に限らず、職場のマネジメントやプライベートでの人間関係にお悩みの方も是非活用してみてください。
第三回はコロナ禍においてハイスピードで普及した、オンラインでの会議や研修などで役立つ、押さえておきたいマナーについてご紹介します。
定番化してきたオンライン上でのコミュニケーション
アフターコロナでも定番となるであろう、オンライン会議に面談。導入当初は、「やっぱり会議や面談は直接顔を見ながらじゃなきゃねぇ…」と言っていた方々も、今では率先して「じゃ、オンラインで!」という風に切り替わってきました。時代の変化とは、時に恐ろしくもありますね。
今回のコラムでは、すっかり定着したオンライン会議や面談で気をつけたいことに関して、あらためて一緒に考えてみたいと思います。既に慣れている、という方でもご自身のオンライン上でのコミュニケーションの向上や振り返りに是非お役立てください。
オンライン会議、面談でのマナー7つのポイント
オンライン会議・面談・研修において気をつけたいポイントを7つにまとめてみました。
ここからは、各ポイントを解説していきます。
1.「顔出し」を相手にわかるようにしよう
なぜなんでしょう…オンラインあるあるの「顔を出さない」系。病院や施設で管理職の役割を持つ方の中にも結構いるのでびっくりします。
化粧してないから…とか、相手の顔を見たくないから…とか、いろんな事情があるのかもしれません。でもこれって、患者さんのところにいくのに覆面をしていくようなものではないでしょうか。コミュニケーションはやっぱり双方向で活発になるものです。なので、オンラインといえどもミーティングにはしっかりと顔を出して参加することをルール化していきましょう。
勤務先ですれ違ってもあいさつもせずに通り過ぎたスタッフがいたら「あの人って、挨拶もロクにできないのね」と思ってしまいますよね。オンライン会議等で顔を出すのは、対面であいさつを交わすのと同じようなものです。一対一のオンライン面談で一方しか顔出しをしないとなったら、もうこれは面談ではないと言っていいかもしれません。私は仕事で、対面式と電話での非対面式のコーチングの両方をやっていますが、対面式のコーチングの方が各段に信頼関係を深めることができると実感しています。
それと、たまになぜか顔を半分だけ出している人や目だけ出している人もいたりしますが、これも結構不気味なので「顔は相手にわかるようにちゃんと出す」としたいところですね。
2.相手の表情などを確認しながら「ペーシング」しよう
相手の話すスピードやリズムにタイミング、声のトーンや表情をできるだけ相手のそれに合わせて話を伺う。これをコーチングでは「ペーシング」と呼びます。逆に、これらが合っていないことを「ノーペーシング」と言います。前項の「顔出しをしない」ということは「ノーペーシング」です。
ペーシングが上手な人とはどんどん会話が弾みますが、ノーペーシングな人には話しづらいので会話はすぐに止まってしまいます。特にオンラインでは目の前に本人がいないだけに、このペーシングがなおざりになります。
そもそも、オンライン上でのコミュニケーションはパソコンの画面に向かって一人で一生懸命に話をしているわけなので、結構孤独です。なので、せめて画面の先の人達にはタイミングよく話を聞いてもらえると嬉しいですよね。
しかし、パソコン上でのやりとりより、「大事な話は電話の方がいい」と感じる人も読者の方の中にはいらっしゃるかと思います。そうした方は聴覚が優れていて、ときに視覚情報が入ると迷ってしまい、邪魔になってしまうことがあるようです。
聴覚が優れている人は、相手の声のトーンを聞き分けていたり、相手の使った言葉の意味をじっくりと考えたりしながら聞いていることが多く、相手と目が合わなかったり、タイミングよく頷かなかったりすることがあります。これが相手には「ノーペーシング」に映ってしまうことがよくあり、コーチングのトレーニング生にもこのタイプの方がよくいます。
「自分はこのタイプかも…」と思う方は、話している内容だけに集中するのではなく、相手の言っていることが相手の表情と合っているかを確かめながら聞くようにしてみるとペーシングができるようになります。意外と人は言行不一致が多いのだなということに気づいてしまうかもしれませんが…(笑)。オンライン面談でもし自分の上司がノーペーシングだったとしたら…なんて考えるだけで怖いですね。
3.「表情」管理をしよう
よく新人が、初めての処置につく時や血管の細い患者さんの採血にいく時に、不安な気持ちがそのまま表情に出てしまうことがあります。不安な表情で患者さんのところにいくと、「この人、自信がなさそうだな。ホントに大丈夫かな?」と、患者さん自身が不安になってしまうことがあります。なので、新人には「自分が不安であっても、患者さんに対応するときは凛とした表情で対応するのが大事だよ」と教えますよね。
臨床の表情管理とはこうした内容ですが、オンライン会議等の場合の表情管理とは、「その場面に合った表情でいること」「自分の表情に責任を持ち管理すること」だと言えるでしょう。オンラインは対面よりも伝わりにくいことを考慮して、納得したら頷いたり、痛ましい内容であれば真摯な表情をしたりと、積極的に表情で非言語的コミュニケーションを用いるようにしましょう。
オンライン研修等で「パワーポイント映ってますか?」と講師が聞いてきたら「はい、映ってます!」とすぐさま両手でOKサインを作るなど、表情や態度で相手の話や講義がこちらにちゃんと伝わっていることを視覚的に伝えるようにしましょう。オンライン会議ではミュートで参加していることが多いと思いますが、ミュートを解除するよりジェスチャーで伝えた方が早くて簡単です。「伝わったことが伝えたこと」、これはコミュニケーションの鉄則です。
通信環境によっては、映像が時間差で届くなどの不便さもあります。「色々不便なんだけど、なんとか会議を一緒に盛り上げていきましょう!」という情熱と態度をもって参加しないと、時間通りに終わらないし、満足度も上がらないと経験則から思います。皆さんはいかがでしょうか。
4.「表現」管理をしよう
「いっぱい反応しなくちゃ講師や司会に失礼だから」という気持ちの人もいるでしょう。反応が多い人がいるのは進める側にとってもありがたいものです。でも中には、「私ってしっかり聞いてるでしょ」アピールがすぎる人もいて、頷きなどのリアクションも多すぎると正直ウザいと感じてしまうものです。
「しっかり反応する人」と「やりすぎの人」との違いはベクトルの向き。しっかり反応する人はベクトルが講師や司会に向かっています。そして根底には「研修が盛り上がりますように」とか「会議がうまくいきますように」という願いがあります。
私ってしっかり聞いてるでしょアピールの頷きが多すぎる人は、ベクトルが自分自身に向かってしまっています。そして根底には、講師や司会に自分の反応力をアピールしたいという気持ちがあります。リアクションがオーバーすぎて研修や会議の進行が止まることもしばしば…。なので、なんだか爽やかな感じがしない…こんな人いますよね。無意識にオーバーリアクションになっている人もいるので、オンラインの画面上の自分の姿と他の人の姿を比べて調整するようにしましょう。
「反応すればすべてOK」ではなく、前項の表情管理と同じで表現の強弱もその場に合ったものにする必要があります。会議や研修だけではなく、オンライン面談も同じですね。
5.「音声」管理をしよう
会議中に参加者が遅れて入ってきた時、入ってきた音(チャイム音や会話、環境音など)がどんどん流れてしまうことがありますよね。ミュートにするのを知らなかった人や忘れた人が多いと、もう話し合いどころではなくなってしまいます。
オンライン会議の前に、基本的なオンライン参加のマナー確認をやっておくか、司会や講師とは別にホストを立てて参加者が入室したらミュートを解除する設定にしておいた方が安心です。
パソコンの設定なのか、本人がパソコンから離れすぎているのかは不明ですが、相手の声が聞き取りにくいこともあります。なので、一度でも自分の発言に「えっ?」と聞き返されたことがあるならばマイク付きイヤホンを使うようにしましょう。
参加者が多く、発言も多く引き出さなければいけない場合は、ミュートを解除するロスタイムがもったいないと思うこともありますね。ミュートにするのは基本だけども、少ない時間で決めることが多い会議には、ミュートにせずともいけるような静かな場所で参加するようにしましょう。
オンライン会議には環境調整をして臨みましょうと言われると、「そもそもそんな場所がない」とか「パソコンの性能が悪い」などということもあります。しかし、afterコロナでも残っていくであろう、オンライン上でのコミュニケーション。変異株等やその他の感染症の蔓延等のことを考えると、やはりこの辺でもう環境を整えておきたいものです。法人でIT環境を整える際に活用できる国の助成金などもあるので、早々にこれらの環境問題を解決しておきたいものですね。
6.講師や司会はしっかりファシリテーションをしよう
ファシリテーションとは、ミーティングなどが円滑に運ぶよう舵取りをすることです。
病院や施設の研修・打ち合わせに、「奥山さんも入ってもらえますか」ということがオンライン研修になってから増えました。移動を伴わないし、研修企画なんかは「いっそのこと、講師にも入ってもらえば早くない?」という発想からかもしれません。今は未曾有の事態で現場も大変。少しでもお役に立てればと思って前向きに参加させてもらっていますが、トータルするとかなりの時間を奪われることになっています。それでも「スタッフのためにいい研修をやりたい!」という情熱があるならこちらも快く参加できますが、実際はそうでもないところが多いのが実情です。
先方は「うちはオンライン研修が初めてなのですいません…」と最初のうちは低姿勢ですが、打ち合わせが始まると態度が豹変することも。基本的にみんなだんまりで、ノーリアクションにノーペーシング。きっと本来のオンライン会議の姿が露呈してしまっているのかもしれません。私がオーバーリアクションで参加していると、事実上の司会が気付いたらこちらになってたという逆転現象も起こります(泣)。やはり、進行側が会議の前にしっかりとルールを提案してチャット欄に貼り付けておくなどし、活発な意見が出てくるようにファシリテーションできるようにしておきたいものです。
オンライン会議は対面の会議よりも司会の果たす役割は重要です。なので、皆が同じ程度のファシリテーションができるような進行のスキルを習得しておくことも大事になってくると思います。
支援先の病院には、それこそこのファシリテーションのテクニックをzoomで録画しておき、スタッフが共有できるようにすることを私はオススメしています。コロナ前は撮影カメラを回して説明しているところを撮って…なんて手間を考えるとなかなかできなかったことですが、今はオンライン会議のシステムもたくさんの会社のものが出てきて選び放題です。そのシステムを使ってパソコン上で説明し録画しておけば、気軽に教材も作成することができるようになりました。
これらのツールをうまく活用し、司会のスキルの底上げをすることが簡単にできるようになったと同時に、「司会が苦手なので」や「人前で話すのはちょっと…」ということが通用しなくなる世の中になっていこうとしているのかもしれませんね(汗)。
7.ルールを作ろう
上の図は「よい話し合い」と「よくない話し合い」をまとめたものです。皆さんの話し合いはどんな話し合いでしょうか?「よい話し合い」をするために何をしたらいいか、あらためて一緒に考えてみることにしましょう。
オンラインでもよい会議や話し合いをするには「オンライン会議のルール」を作るのが有効です。組織によって参加者のカラーや課題は違うと思います。なので、ルールを作る際には「オンライン会議や面談でどんなことに困っているか」「どんなルールがあればいいと思うか」をアンケート調査で引き出し、オリジナルルールを作成することをオススメします。
ある病院では、オンライン会議には参加者が顔出ししなくてよいという暗黙のルールが出来上がっていて、看護部長の顔だけが会議に映っているという異様な光景がありました。オンライン会議のウェビナー化ですね。私もオンラインの研修をたくさんやっているのですが、やっぱり参加者の方々の顔が見られる方が進めやすいし、ノリノリになれます。ノリノリになると次の回でお話しようかと思っていた内容なんかも伝えたくなったりするので、有料の研修では顔を出して反応をよくすることでお得感が味わえるかもしれません(笑)。
…と横道にそれましたが、前述したウェビナー化したオンライン会議になるなどそこそこの組織で抱える課題が違いますので、Googleフォームでアンケート調査をしてルールを作成するのがいいと思います。今は無料ですぐにアンケートが聴取できるような便利な時代です。スマホやパソコンで5分もあればアンケートの聴取から簡単な評価までできてしまいます。
下の図にオンライン会議のルールの一例をまとめてみました。こちらを参考にぜひ皆さんの組織や参加者に合ったルールを作ってみてください。
まとめ
今回は7つのオンラインでの会議や研修などで役立つ、押さえておきたいマナーのご紹介でした。皆さんは実践できていたでしょうか?
オンライン化は慣れるまではいろいろと大変なこともありますが、IT化が進むのはいい面もたくさんありますよね。すべてをリソースとして進んでいきたいものですね。
ここまで読んでくださりありがとうございました。 次回の更新もお楽しみにお待ちください。
Profile
奥山美奈
TNサクセスコーチング 代表取締役
教育コンサルタント、ICC国際コーチ連盟認定コーチ、高等学校教諭(看護)、看護師
エルゼピアジャパンe-leaning 接遇、上手な叱られ方講師
メディカ出版キャンディリンク講師
組織を患者、スタッフが引きよせられる「マグネット化」するための支援を行う「教育コンサルタント」。主に管理者育成、人事評価制度構築、院内コーチの認定を実施。
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コンサルティング実績
小倉第一病院、慈恵会病院、愛育会、竜操整形外科、鳩ヶ谷クリニック他
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著書
「共育コーチング」(日本看護協会出版会)
「新人・若手・学生のやる気と本気の育て方」(日総研 出版)
「対人力を磨く22の方法」(メディカ出版)
「看護学生のためのコミュニケーションlesson」(メヂカルフレンド社)。
取材、連載多数。
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